水や薬液(研磨材が含まれたスラリーなど)を用いない研磨加工は乾式研磨加工(ドライポリッシング)、水や薬液を用いる研磨加工は湿式研磨加工(ウェットポリッシング)と呼ばれています。CMP(ケミカルメカニカルポリッシング)は湿式研磨加工(ウェットポリッシング)の1つで、機械的(物理的)作用と化学的作用を複合させた研磨方法です。概ね厚さ数mm以下の平板状の加工対象に対して、研磨パッド(湿式研磨加工用パッド)を用いて研磨し、加工対象を鏡面化する加工です。
研磨パッドは、不職布などを円形の基台に貼り付けて、水や薬液と一緒に研磨加工を行います。
この研磨パッドをテーブル面に並行になるように加工軸に取り付けて、研磨パッドとテーブルの両方を回転させながら、テーブルに置いた平板状の加工対象に一定の荷重で押し当てることで加工対象の面全体を加工します。
加工対象によって、研磨パッドと薬液の組み合わせはさまざまです。
研磨パッドによる湿式研磨加工(ウェットポリッシング)の装置構造は、一度に複数枚の加工対象を研磨するバッチ式と、1枚ずつ加工対象を研磨する枚葉式があります。バッチ式は枚様式と比較して生産性が向上し、枚様式はバッチ式と比較して加工後の厚さ精度が向上します。
研磨パッドと加工対象の位置関係は、研磨パッドが上方で加工対象をのせたテーブルが下方に設置された構造と、研磨パッドが下方で加工対象が上方に設置された構造になっています。
半導体のパッケージング工程(後工程)において、100 μm以下の厚さまで薄化加工する際に、ウェーハの裏面研削で生じた微少な研削ダメージの除去を目的として、ストレスリリーフとよばれる研磨加工をおこなうことがあります。ストレスリリーフ後にウェーハの高清浄性が求められるデバイスでは、湿式研磨加工(CMP、ウェットポリッシング)が使われたりしています。
また、サファイアなどの光学部品応用デバイスや、タンタル酸リチウム(LT)/ニオブ酸リチウム(LN)などの高速通信機器SAWフィルタでは、デバイス性能向上のため裏面研削後に研磨工程が必要とされ、湿式研磨加工(CMP、ウェットポリッシング)が使われることがあります。
その他にも、半導体用のシリコン(Si)基板を製造する工程でシリコン基板の表裏面を鏡面化するために湿式研磨加工(CMP)が用いられたり、半導体の基板(ウェーハ)表面に回路形成をおこなう工程(前工程)で、絶縁膜や金属膜などの薄膜をnmオーダーで平坦化するために湿式研磨加工(CMP)が使われたりしています。
ポリッシングのみをおこなうフルオートマチックポリッシャ(研磨パッドによる全自動研磨加工機)と、グラインダ(砥石による研削加工機)とポリッシャ(研磨加工機)が一体になったフルオートマチックグラインダポリッシャがあります。
ドライポリッシングホイールを上方に、加工対象をのせたテーブルを下方に配置する構造で、枚葉の研磨加工をおこないます。
研磨加工部に加えて、搬送、洗浄機能が搭載されており、加工対象をカセット単位で処理します。
研削加工部と研磨加工部を1つの装置のなかに組み込み、厚さ測定、搬送、洗浄には薄ウェーハを想定した工夫が施されています。
研磨パッド(湿式研磨加工用パッド)
・シリコン(Si)や炭化ケイ素(SiC)などの半導体ウェーハの鏡面加工、ウェーハ裏面の鏡面加工
・シリコンと樹脂などの複合材の鏡面加工
・サファイアなどの光学部品応用デバイスの鏡面加工、ウェーハ裏面の鏡面加工
・タンタル酸リチウム(LT)やニオブ酸リチウム(LN)などの高速通信機器SAWフィルタの鏡面加工、ウェーハ裏面の鏡面加工