シリコンは地球の固体部分(地殻)に最も多く含まれる元素であり、二酸化ケイ素の形で存在しています。単結晶シリコン(Si)の結晶構造はダイヤモンド型構造で、ホウ素やリンなどの不純物を添加することで、容易にp型半導体、n型半導体が作成できるため、半導体材料として非常に多く使用されています。
融点 | 1414℃ | 熱膨張率 | 20℃ 2.6µm/(m・K) |
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沸点 | 3265℃ | モース硬度 | 7 |
結晶構造 | 立方晶系 | バンドギャップ | 0℃ 1.206eV |
熱伝導率 | 0℃ 168W/(m・K) |
なお、半導体や太陽電池に用いられるシリコン(Silicon)とシリコーン(Silicone)は異なる物質を指しており、後者は有機ケイ素化合物のことを指します。シリコーンは潤滑剤(シリコーングリス)やゴム(シリコーンゴム)など、耐熱性や潤滑性、電気絶縁性に優れる材料となることから、電気・電子部品や医療材料など多くの産業分野で使われています。
シリコンは元素記号Siで表わす金属ケイ素(珪素)のことで、半導体の基板材料として最もよく使われていいます。シリコンは地殻中元素の存在比率が26.77%と、地球上では酸素に次いで2番目に多いポピュラーな元素で、自然の状態では、酸素と固く結び付いた化合物(二酸化ケイ素)として存在しています。シリコンを半導体材料として使うためには、この二酸化ケイ素から酸素を分離する必要があります。
また、シリコンは半導体材料だけでなく、赤外光学系のレンズに使用されることもあります。シリコンは赤外域(波長2-6μm)で高い透過性があり、精密光学研磨加工を施すことで、近赤外イメージングや赤外分光を含むさまざまな赤外アプリケーションに用いることができるようになります。この他にもケイ素を含む合金やケイ素を含むセラミックス、有機ケイ素化合物(シリコーン)など、工業的に多くの用途で使用されています。
半導体の基板材料として使われる円盤状のシリコンは、シリコンウェーハと呼びます。半導体の基板材料に用いるには、シリコンを99.999999999%(9が11個並びイレブンナインと言います)以上の高純度に精製する必要があります。高純度に精製した原料(多結晶シリコン)を溶かし、大きく細長い棒状の(インゴット)単結晶を成長させます。単結晶を1mm以下にスライスし、円盤状に整えることでシリコンウェーハが作られます。単結晶を成長するには、溶解したシリコンから単結晶を引き上げるCZ法(Czochralski法)や部分的に溶融しながら単結晶化を行うFZ法(Floating Zone法)などがあります。
シリコン基板の結晶方位には(100)、(110)、(111)という種類があります。半導体の基板材料としては(100)ものが一般的です。一部の最先端メモリーに(110)が使われたり、AFM(Atomic Force Microscope: 原子間力顕微鏡)やSTM(Scanning Tunneling Microscope: 走査型トンネル顕微鏡)の標準試料として(111)のシリコン基板が使われることがあります。
半導体の基板材料の表面には非常に精密な回路が形成されるため、ウェーハ表面を平ら(平坦)にする必要があります。シリコンのインゴットから円板状に切り出した直後のウェーハの表面は、微少なうねりが生じているため、平坦化し、指定厚みまで薄くするための加工を施す必要があります。この薄くするための加工機として、ディスコのグラインダ(砥石による研削加工機)が用いられます。
シリコンウェーハは現在の多くの半導体デバイスー演算を行うロジックや、記憶素子に用いられるメモリ-のほか、太陽電池にも良く用いられています。また、前述のように赤外線(波長2-6 μm)を良く透過することから、赤外光学系の窓やレンズの素材に用いられることもあります。
半導体製造工程では、前工程でのデバイス製造のち、後工程に、ディスコのダイシングソー(砥石による切削加工機)やレーザソー(レーザーによる切削加工機)、グラインダ(砥石による研削加工機)などが用いられます。