炭化ケイ素、シリコンカーバイド、Silicon Carbide、SiC
炭化ケイ素(SiC)は、確認できている中ではダイヤモンド、炭化ホウ素に次いで3番目に硬い化合物です。天然ではほとんど存在せず、隕石中よりわずかに確認されています。人工の炭化ケイ素の精製方法は、エジソンの助手をしていたアチソン(Edward Goodrich Acheson)が人造ダイヤモンドをつくる実験の過程で偶然発見しました。人工の炭化ケイ素はモアサナイト(Moissanite)とも呼ばれ、ダイヤモンドに劣らない輝きや透明度があり、コストパフォーマンスに優れているため、ジュエリー用途としても人気があります。
炭化ケイ素は炭素(C)とシリコン(Si)が1:1で共有結合した化合物です。炭化ケイ素は、化学組成が同じでありながら炭素とシリコンの位置関係が異なるさまざまな結晶多形(ポリタイプ)が存在します。多形の結晶方位ごとに、立方晶系の(cubic)対称性を持つ物をC、六方晶系の(hexagonal)対称性を持つ物をH、菱面体晶系の(rhombohedral)対称性を持つ物をRで表記します。代表的な炭化ケイ素(SiC)の多形には、3C、4H、6H、15Rがあり、車、白物家電などのパワー半導体においては、4Hが使用されています。
炭化ケイ素は非常に硬い原料であり、新モース硬度ではダイヤモンド:15、炭化ホウ素:14、炭化ケイ素:14と高い耐摩耗性をもっています。炭化ケイ素は絶縁破壊電界がSi材料に比べて大きく、耐圧性に優れており、バンドギャップも広く、高い熱伝導率、耐食性、耐熱性から厳しい環境下で動作する半導体に向いた材料として注目されています。
炭化ケイ素は、一般的にアチソン法により電気抵抗炉で製造される化合物です。電気抵抗炉で炭素材とシリコン材を2,220℃程度の高温で化学的に反応させてインゴットを精製します。「炉に原料入れる」「通電する」「停めて冷す」「SiCインゴットを取出す」などの各工程に数日ずつ掛かり、さらに炭化ケイ素のインゴットから不純物を除き、粉砕し、さらに不純物を除き、粒度ごとに篩い分けて製品化します。
炭化ケイ素(SiC)のインゴットから基板を切り出す加工工程や、基板表面を平坦化し所定の厚みまで薄くする加工工程において、ディスコのレーザソー(レーザによる切削加工機)、グラインダ(砥石による研削加工機)、ポリッシャ(研磨パッドによる湿式研磨加工(CMP、ウェットポリッシング)機)による対応が可能です。基板製造におけるインゴットからの基板取れ個数が増加することで、材料損失を大きく低減できます。
炭化ケイ素(SiC)はシリコン(Si)に比べて絶縁破壊強度、バンドギャップが大きく、またデバイス作製に必要なP型、N型の制御範囲が広いことから、シリコン(Si)に変わるパワー半導体の材料として採用が進んでいます。炭化ケイ素(SiC)を用いたパワー半導体は、出力電力の高い領域で、シリコンと(Si)比べて電力変換効率が向上し、低損失化を実現できます。これにより、電子機器の消費電力を低減できCO2削減に貢献します。
他にも高輝度な青色発光ダイオード、高耐圧・低オン抵抗・高速なショットキーバリアダイオードや、MOSFET(電界効果トランジスタ)の基板材料に使われています。他にも高い耐熱性・耐久性・熱伝導性から原子力分野でも利用されています。
デバイス製造における炭化ケイ素(SiC)の薄化加工や個片化加工に、ディスコのグラインダ(砥石による研削加工機)、ポリッシャ(研磨パッドによる乾式研磨加工(DP)機)、ダイシングソー(砥石による切削加工機)、レーザソー(レーザーによる切削加工機)が用いられています。