サファイアは鉱物学的にはコランダム(Al2O3:酸化アルミニウム)の一種で、モース硬度『9』とダイヤモンドに次ぐ硬さで加工が難しい素材です。アルミナセラミックスという素材も同じ化学式Al2O3で表されますが、これはダイヤモンドと炭素の違いと同様に単結晶がサファイア、多結晶がアルミナセラミックスという分類になります。
人工的に合成された高純度単結晶サファイアは、広く工業用分野で使われています。なお、宝飾品としてのサファイアは、アルミナ(Al2O3)に微量のクロム(Cr)が混ざると赤く発色してルビーになり、鉄(Fe)やチタン(Ti)が混ざると青く発色します。一方、産業分野に用いられるサファイアは、純度の高い無色透明な単結晶サファイアに加工を施したものです。
サファイアは大量生産が難しい素材でしたが、技術の進歩により安価、かつ安定的な量産加工ができるようになりました。サファイアの代表的な製造方法としてEFG法(Edge-defined Film-fed Growth法)があります。この方法では、高温のAl2O3融液にサファイアの種結晶をつけてゆっくりと引き上げながら、必要とする結晶軸、結晶面でサファイアを成長させます。現状ではφ6inchサファイアウェーハの切り出し加工が普及し始めており、産業向けにますます広がりを見せています。
サファイアはその優れた特性から、サファイアガラスとして腕時計の風防や軸受けレコード針などに加工されています。近年では、iPhoneなどのスマートフォンのカメラレンズの保護や青色・緑色LEDの基幹素材として、サファイアが注目されています。
デバイス製造時のサファイアウェーハの薄化加工や切削加工に、ディスコのグラインダ(砥石による研削加工機)、レーザソー(レーザーによる切削加工機)が用いられます。