ニオブ酸リチウム(LiNbO3・LN)は、ニオブ(Nb)とリチウム(Li)と酸素(O)の化合物で、酸化リチウム(Li2O)と酸化ニオブ(Nb2O5)が1:1の割合で構成される結晶材料です。リチウムナイオベート、酸化ニオブリチウム (Lithium Niobe Oxide) とも呼ばれています。LN結晶は三方晶系に属し、イルメナイト型に似たLN型と呼ばれる熱的・化学的に安定な構造を有します。LNと似た特徴を持つ素材としては、タンタル酸リチウム(LiTaO3・LT)が挙げられます。
化学式 | LiNbO3 | LiTaO3 |
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結晶構造 | 三方晶系イルメナイト類似構造 | 三方晶系イルメナイト類似構造 |
融点 | 約1,250 ℃ | 約1,650 ℃ |
密度 | 約4.65 g/cm3 | 約7.45 g/cm3 |
モース硬度 | 5 | 5.5 |
ニオブ酸リチウム(LiNbO3・LN)は、圧力や温度変化によって電荷が生じる圧電性・焦電性、強い光との相互作用が非線形に起こる非線形光学効果などの特性があります。圧電性・焦電性を利用して圧電素子や表面弾性波(Surface Acoustic Wave・SAW)素子の基板として使用されます。また、非線形光学効果を利用してレーザ素子の基板としても使用されています。通常のLN基板に加え、還元処理により焦電性を改善した黒色のBlack-LN基板や、耐光損傷性を改善するために酸化マグネシウムを添加したMgO:LN基板などがあります。
ニオブ酸リチウム(LiNbO3・LN)は、チョクラルスキー(Czochralski・CZ)法を用いた結晶成長が可能です。この結晶成長によって生成されたLNインゴットをワイヤーソーにて基板状にスライスします。用途によってスライスの方向や角度を変えることで、LN基板の特性を変えることができます。その後、ラッピングや研削・研磨などの加工を経てLN基板となります。
ニオブ酸リチウム(LiNbO3・LN)の基板製造において、ディスコのグラインダ(砥石による研削加工機)、ポリッシャ(研磨パッドによる湿式研磨加工機/CMP、ウェットポリッシング機)での加工が可能です。
ニオブ酸リチウム(LiNbO3・LN)は主にスマートフォンなどの通信端末に搭載されるSAWフィルタの基板として採用されています。SAWフィルタは弾性表面波フィルタまたは表面弾性波フィルタとも呼ばれます。スマートフォンで複数の周波数帯に対応するマルチバンド化が進む中、雑音や混信を防ぐために特定の周波数だけを通すSAWフィルタが複数必要になっています。圧電性・焦電性の特性を持つLN基板はSAWフィルタの基板材料として最適です。
ニオブ酸リチウム(LiNbO3・LN)の薄化加工や個片化加工において、ディスコのグラインダ(砥石による研削加工機)、ダイシングソー(砥石による切削加工機)、レーザソー(レーザーによる切削加工機)での加工が可能です。