酸化ガリウム(Ga2O3)はガリウム(Ga)と酸素(O)の構成比2:3の無機化合物で、化学式Ga2O3で表される半導体です。酸化ガリウムは歪んだ立方最密充填構造の配列をとり、歪んだ四面体および八面体構造を有しています。
酸化ガリウムは、次世代のパワー半導体の材料として開発が進む炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)のバンドギャップ3.3~3.4eVより広い、4.7~4.9eVのバンドギャップを持っています。酸化ガリウムは電子移動度が他材料に比べて劣りますが、絶縁破壊に対する抵抗が高いため、酸化ガリウムをパワー半導体に適用した場合、より一層の高耐圧・低損失化など、優れたデバイス特性が期待できます。
シリコン(Si) | 炭化ケイ素(4H-SiC) | 窒化ガリウム(GaN) | 酸化ガリウム(Ga2O3) | |
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バンドギャップ(eV) | 1.1 | 3.3 | 3.4 | 4.7 - 4.9 |
電子移動度(cm2/Vs) | 1,400 | 1,000 | 1,200 | 300 |
絶縁破壊電界(MV/cm) | 0.3 | 9.7 | 9.0 | 10.0 |
バリガ性能指数 | 1 | 340 | 870 | 3,444 |
酸化ガリウムでは、ワイドギャップ半導体の中ではめずらしくFZ法(Floating Zone法)やEFG法(Edge-defined Film-fed Growth法)といった融液成長法で結晶成長が可能な素材です。昇華法、気相成長法など、結晶成長に大きなエネルギーとコストを必要とする SiCやGaNと異なり、酸化ガリウムは結晶欠陥の少ない大口径ウェーハを安価に製造できる可能性があります。
酸化ガリウムを応用したデバイスとしては、ワイドバンドギャップを生かしたショットキーバリアダイオードなどのパワー半導体や、透明な導電帯という特性を生かしたLED基板などが考えられます。酸化ガリウムの物性上の欠点として、熱伝導率がSiCやシリコンよりも劣ることが挙げられます。そのため酸化ガリウムをパワーデバイスに応用する場合、大電流を流した際の発熱をデバイス内部から十分に排出できる構造にする必要があります。
基板製造時のウェーハの薄化や個片化に、ディスコのグラインダ(砥石による研削加工機)、ダイシングソー(砥石による切削加工機)、レーザソー(レーザーによる切削加工機)が用いられています。